パーキンソン病では神経精神症状が高頻度に出現、クリニカルレビュー
パーキンソン病(PD)患者では神経精神症状(NPS)が高頻度に見られ、適切な管理が必要であることを報告したクリニカルレビューが、「The BMJ」に2022年10月24日掲載された1。
米ペンシルベニア大学のDaniel Weintraubらは、PD患者のNPSの疫学や機序、治療・管理戦略に関するクリニカルレビューを作成した。レビューの執筆にあたっては、ランダム化比較試験(RCT)の系統的レビューのほか、レビュー研究やガイドラインについても確認し、諸条件を満たしたエビデンスとなる研究100件を特定した。
その結果、PD患者では大うつ病性障害や不安障害、精神症(psychosis)、衝動制御障害やアパシー、認知障害といった主要なNPSの累積有病率が高いことが分かった。例えば、大うつ病性障害は5~20%の患者に見られ、亜症候性の抑うつ症状も含めればさらに10~30%の患者が影響を受けているが2、その認識や治療は不十分であることが多かった3。全般的不安障害やパニック発作を含む不安症状は、最大40%の患者で認められた4-6。不安症状は非運動症状の変動に関連して増悪し、特にドパミン作動薬のウェアリング・オフ現象の影響を受けることが報告されていた4,5。抑うつ症状や不安症状は、一部のPD患者では運動症状の発症前から認められることから7、これらのNPSには神経生理学的因子が寄与していることが示唆された。幻覚や妄想などの精神症は、前向き研究の結果によると累積有病率が長期的には約60%にも達し8、疾患進行に伴いその頻度が増加すること、認知障害のある患者に多く見られることが特徴であった9。
PD患者の抑うつ症状に対する薬剤療法では、複数の抗うつ薬クラスで有効性と良好な忍容性を認められることが、RCTのメタ解析10で報告されていた。また精神療法では、認知行動療法(CBT)の研究が最も進んでおり、CBTは対照に比べ有効であることが、2件のメタ解析11,12で報告されていた*a。さらに刺激療法では、左背外側前頭前野(DLPFC)への反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)による高周波刺激が全体として有益であることが2件のメタ解析13,14で報告されており、治療効果は有意であった*b。
こうした結果に基づき、Weintraubらは「PD患者の臨床的に明らかな抑うつ症状に対する初回治療では、抗うつ薬の単剤投与または精神療法コース使用のいずれか、場合によってはその併用を推奨する」と結論付けた。
また、その他のNPSについても同様に対応策をまとめ、「不安に対しては、症状が一貫して存在するのか、それとも非運動症状に伴い発生しているのかを判断することが重要である。これは臨床状況により管理戦略は異なる場合があるためである。一般的には、不安症状に対する薬物療法では、SSRIが第一選択となるだろう」としたほか、「精神症に対しては、まずせん妄や感染症などが原因でないことを確認し、抗コリン薬などの影響し得る薬剤の使用を最小限に抑える。その上でPDの薬物療法を見直し、特に精神症のリスクが高いものを優先しつつ、投与総量を減らすべきである」と述べている。
Weintraubらは「NPSはPD患者の障害やQOL、転帰を悪化させ、介護者の負担を増加させるため、臨床的に重要な問題である。今後は、患者と介護者の生活を改善することを目標として、新たな治療法を開発し、その試験を行っていくべきである」とコメントしている。(編集協力HealthDay)
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注釈
*a
1件目11の研究:標準化平均差(SMD)-0.83、95%信頼区間(CI)(-1.26~−0.40)、2件目12の研究:同−0.74(−1.22~−0.26)。
*b
(同0.80、0.31~1.29、I^2=89.1%、P<0.001)