周産期うつ病は死亡リスク、特に自殺リスクを長期にわたり高める

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

周産期うつ病を発症した女性は、発症していない女性に比べて死亡リスクが長期にわたって高くなり、特に診断後1年以内の自殺リスクの増加が顕著であることが、「The BMJ」に2024年1月10日掲載された論文で明らかにされた1

カロリンスカ研究所(スウェーデン)のNaela Hagatulahらは、スウェーデンの出生、死亡、入院・外来受診、薬剤処方などの全国登録データをもとに、周産期うつ病を発症した女性を、発症しなかった女性、および家族という因子の影響を除くために父母を同じくする姉妹(以下、姉妹)と比べ、産後の死亡リスクを評価した。まず、2001年1月1日から2017年12月31日までの間に生児を出産した女性の中から、初めて周産期うつ病の診断を受け、専門診療科でケアを受けるか抗うつ薬を使用していた86,551人を抽出(症例群)。次に、これらの女性1人に対し、年齢(±1歳)および出産年をマッチさせた、周産期うつ病の診断を受けていない女性10人を対照群(総計865,510人)として選び出した。姉妹間の比較では、対象期間中に生児出産した姉妹を1人以上持つ周産期うつ病の女性24,473人と、その姉妹で周産期うつ病の診断を受けていない女性246,113人を対象とした。

追跡期間については、周産期うつ病の診断日またはマッチングした日をindex dateとした。そして、index dateまたは出産日のうち、いずれか後に生じた方を起点とし、移住、死亡、周産期うつ病の診断(対照群のみ)、2018年12月31日を迎える、のうち最初に起きたものを終点とした。

症例群の診断時の年齢中央値は31.0歳〔四分位範囲(IQR)27.0〜35.0〕歳で、55%は妊娠中(産前うつ病)に、45%は産後1年以内(産後うつ病)に周産期うつ病の診断を受けていた。中央値7.0年(最長で18.0年)に及ぶ追跡期間中に、症例群で522人(発生率0.82/1,000人年)、対照群で1,568人(同0.26/1,000人年)が死亡していた。

Cox比例ハザードモデルを用い、社会人口学的属性、および妊娠時に問題となる因子(喫煙、BMI、糖尿病、高血圧など)を調整して解析した結果、症例群は対照群に比べ、死亡リスクが有意に高かった(ハザード比2.11、95%信頼区間1.86-2.40)。精神疾患の既往歴の有無で分けて検討しても、症例群は対照群より死亡リスクが高かった(精神疾患の既往歴なし:同2.09、1.79-2.45、既往歴あり:同2.16、1.70-2.75)。周産期うつ病を産前うつ病と産後うつ病に分けて解析すると、産後うつ病の方が死亡リスクは高かった(産前うつ病:同1.62、1.34-1.94、産後うつ病:同2.71、2.26-3.26)。

姉妹間の比較では、周産期うつ病の女性は、そうでない姉妹よりも死亡リスクが有意に高かった(同2.12、1.16-3.88)。精神疾患の既往歴の有無で分けて検討すると、統計的に有意ではないが、同様の傾向が認められた(既往歴なし:同1.98、0.97-4.01、既往歴あり:同2.23、0.88-5.64)。

柔軟なパラメトリックモデルを用いて、対照群と比べた症例群での死亡リスクが時間の経過に伴いどのように変化するのかを見たところ、死亡リスクは診断から30日後に最も高く(同5.01、3.51-7.16)、1年後には減じたものの依然として有意に高く(同3.16、2.59-3.86)、この状態が18年後まで続いた(同1.60、1.16-2.21)。このような死亡リスク上昇の原因を探るために、Cox比例ハザードモデルで原因別死亡率のハザード比を推定したところ、最も高いリスクを示したのは自殺であった(同6.34、4.62-8.71)。ただし、症例群での自殺の発生率そのものは高くはなかった(0.23/1,000人年)。

著者らは、「周産期うつ病を発症した女性は、最初の1年間に自殺するリスクが高かった。患者本人およびその家族、さらに医療専門家は、周産期うつ病が、精神疾患の既往とは無関係に、患者に深刻な健康被害を引き起こし得ることを認識すべきだ」と述べている。(HealthDay News 2024年1月17日)

 

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参考文献

  1. Hagatulah N, et al. The BMJ. Published online January 10, 2024. doi: 10.1136/bmj-2023-075462