ICUで死亡する患者の家族には「3段階サポート方式」が悲嘆遷延防止に有効

集中治療室(ICU)に入室して最期を迎える患者の家族に対し、3段階に分けて医療従事者との話し合いの機会を設けるサポート方式により、患者の死後に家族の悲嘆症状が遷延することを防げるとする研究結果が「Lancet」2022年2月12日号に掲載された1

Saint-Louis病院(フランス)のNancy Kentish-Barnesらは、ICUで死期を迎える患者の家族を対象に、心理的負担を軽減するための3段階サポート方式を開発。この方式の有効性を検討するため、同国の医療施設34カ所のICUで多施設クラスターランダム化比較試験が実施された。参加施設は、3段階サポート方式による介入施設または対照施設に1対1の割合でランダムに割り付けられた。対象者は、該当のICUに2日間以上在室し、生命維持治療の保留または中止が決定された18歳以上の患者の家族であった。

3段階サポート方式では、家族に対し、患者を担当する医師や看護師との間に3回の話し合いの場を設ける。1回目は、終末期に備えるための家族カンファレンスである。生命維持治療の保留・中止が適切と判断されることを伝え、「最期に立ち会いたいか」といった家族の意向などを確認する。2回目は、ICU滞在中に医師と看護師が個別に1回以上病室を訪れる。見放したわけではないと示し、家族の様子を確認し、必要に応じて緩和ケアの方法や家族自身のケアの必要性などについて話し合う。3回目は、患者の死後に専用の部屋で哀悼の意を示す。家族に患者の死をめぐる質問などを促し、気持ちを表出する機会などを作る。このサポート方式の実行のため、介入施設では医療チームが特別に訓練を受けた。対照施設では、家族に対して各施設の最善水準の支援とコミュニケーションを実施した。

患者の死亡から1、3、6カ月後、家族に対して電話インタビューを実施し、その心理状態を評価した。主要評価項目は、6カ月の時点でも悲嘆症状が遷延している人(遷延性悲嘆障害(PG)-13で30点以上)の認められる割合であった。さらに副次評価項目として、quality of death and dying(QODD)-1で評価したの看取りの質、medical interview satisfaction scale(MISS)-21で評価した終末期の対話の満足度、hospital anxiety and depression scale(HADS)で評価した不安と抑うつ、改訂impact of event scale(IES-R)で評価した外傷後ストレス障害(PTSD)症状なども取り上げた。

2017年2月から2019年10月にかけて、患者の家族875人(介入群484人、対照群391人)が研究に組み入れられ、介入群の379人(78%)、対照群の309人(79%)が6カ月後の電話インタビューの時点まで追跡された。なお、介入群の3回の話し合いのうち1回目は448人(93%)、2回目は446人(92%)、3回目は410人(85%)に対して有効に実施された。

一般化線形混合モデルを用いてITT解析により両群を比較した結果、介入群では悲嘆症状の遷延した人の割合が15%(57人)と、対照群の21%(66人)に比べて有意に低かった(P=0.035)。PG-13平均値も、介入群では20.9点であり、対照群の23.4点よりも有意に低かった(平均差2.5、95%信頼区間1.04-3.95、P=0.003)。

さらに副次評価項目も同様に比較した結果、介入群は対照群に比べてほぼ全ての項目で良好な成績を示した。1カ月時に家族がQODD-1で評価した看取りの質(平均8.5点対7.8点、P=0.02)、MISS-21で評価した終末期の対話の満足度(平均6.1点対5.8点、P=0.04)は有意に高かった。6カ月時にHADS下位尺度で評価した不安(平均6.0点7.2点、P=0.002)と抑うつ(平均4.1点対5.0点、P=0.02)、IES-Rで評価したPTSD症状(平均13.6点対17.5点、P=0.013)は有意に低かった。

著者らは「ICUで最期を迎えた患者の家族に対し、医師が主導し看護師が支援する3段階サポート方式を実践することにより、悲嘆症状が遷延する人の割合を有意に減らすことができた」と述べている。(編集協力HealthDay)

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参考文献

  1. Kentish-Barnes N, et al. The Lancet 2022 Jan 19;S0140-6736(21)02176-0.